AI社員だけの会社で一番難しいのは、実務じゃない。意思決定の設計だ。
全部AIに決めさせれば、いつか取り返しのつかない事故が起きる。全部人間が承認すれば、人間がボトルネックになって自動化の意味が消える。どちらの極端もダメで、答えは「どの決定を、誰が、どう決めるか」を制度として書き切ることにある。
うちの会社の意思決定設計を公開する。骨格は3つ。3色のゲート、3層の報告、そして責任の帰属。
大原則 — デフォルトは「実行」
まず土台の思想から。うちのAI社員のデフォルトは実行寄りだ。原則として承認を待たずに動く。人間が最終確認するのは「不可逆 × 高リスク」の交差点だけ。
これを逆にして「原則承認制・例外だけ自律」にすると何が起きるか。AIは1日に何十件も判断するので、承認待ちの列がすぐ人間の処理能力を超える。すると人間は精査せずに承認ボタンを連打し始める。形だけの承認制は、承認なしより悪い。リスクは減っていないのに、減った気になるからだ。
だから設計の出発点は「何を確認するか」ではなく「何を確認しないと決めるか」になる。
3色のゲート
全業務を3色に塗り分ける。
🟢 自律実行 — 承認なしで実行し、日報に1行残すだけ。社内文書の作成、調査、記帳のドラフト、タスク整理。取り消せる仕事、社内で閉じる仕事は全部ここ。
🟡 実行して事後通知 — 実行してから報告チャンネルに通知する。経理データの登録、請求書の発行、通常の顧客連絡。基準は「外部に触れるが、取り消しや訂正が効くもの」。事前承認にしないのは速度のため。事後通知を義務にするのは、人間が異変に気づく経路を残すためだ。
🔴 実行前に必ず承認 — 契約の締結、支払いの確定、本番環境への反映、一定額を超える支出、社外への重要な送信。基準は「不可逆、または高額、または会社の信用に関わるもの」。ここだけは、AIがどれだけ確信していても止まって待つ。
