うちのAIコンサル事業には、業務委託で営業を手伝ってくれるSさん(仮名)がいる。非エンジニアで、AIツールの操作経験はない。
Sさんの仕事は見込み客へのアプローチと商談。その武器になるのが「無料AI診断レポート」——相手企業の業務ヒアリングをもとに、どの業務がAI化できて月何時間浮くかを試算する資料だ。
問題は、このレポートを作れるのが社内のAI社員だけだったこと。SさんがヒアリングしてもレポートはAIに依頼が届かないと作れず、間に僕が入って伝言するボトルネックが生まれる。営業を任せるために人を頼んだのに、僕の稼働が増えたら本末転倒だ。
だから、Sさんが直接AI社員に仕事を頼める窓口を作った。
使い方はこうだ。専用のSlackチャンネルに、Sさんがヒアリング結果をそのまま投げる。会社名・業種・従業員数・くり返し業務・月間時間・予算感・検討時期。するとAI社員がスレッドで無料診断レポートを返し、同じ内容を社内の営業フォルダに保存し、有望案件ならパイプライン台帳に1行追記する。Sさんから見れば「Slackで頼むとスレッドにレポートが返ってくる同僚」で、ChatGPTの画面もプロンプトの書き方も知らなくていい。
裏側の構造は、常駐しているAIディスパッチャーだ。Slackのイベントを常駐AIセッションが受け取り、チャンネルごとに決められた担当AI(人格と作業フォルダを持つサブエージェント)へスレッド単位で振り分ける。社内の各事業部チャンネルはこの仕組みで既に回っていて、今回はそこに「社外の人が話しかけてくる窓口」を1つ増やした形になる。
ただし、社外の人にAIを直接触らせるのは、社内とはまったく別の問題だ。悪意がなくても「ついでにこれも調べて」は起きるし、プロンプトインジェクションを仕込まれる可能性もゼロではない。
この仕組みの本体は、レポート生成ではない。権限設計だ。
